こんにちは。私は非営利組織で精神障がい者の支援活動に携わるボランティアの田中と申します。今日は、精神障がい者の雇用支援について、企業の皆様にできることをお伝えしたいと思います。
精神障がいを抱えながらも働く意欲のある方は多くいらっしゃいます。しかし、社会の偏見や職場環境の整備不足などにより、就労の機会を得ることが難しいのが現状です。
企業の皆様には、精神障がい者の雇用を通じて、多様な人材を活かす組織づくりに取り組んでいただきたいと考えています。障がいの有無に関わらず、一人ひとりの能力を発揮できる職場環境を整えることは、企業の社会的責任であり、持続的な成長にもつながるはずです。
今回は、私がこれまでの支援活動で得た知見をもとに、精神障がい者雇用の意義と現状、採用から職場定着までの具体的な方策についてお話しします。皆様の実践の一助となれば幸いです。
それでは、精神障がい者の雇用支援について、企業の皆様にできることを一緒に考えていきましょう。
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目次
精神障がい者雇用の意義と現状
精神障がい者の就労の重要性
精神障がい者にとって、働くことは社会参加の重要な手段であり、生きがいややりがいにもつながります。就労を通じて自己実現を図り、経済的な自立を果たすことは、recovery(回復)の大きな促進要因となるのです。
また、精神障がい者の就労は、企業にとってもメリットがあります。多様な視点や発想を取り入れることで、イノベーションの創出や生産性の向上が期待できます。加えて、障がい者雇用は企業のイメージアップにもつながり、ESG投資の観点からも重要視されるようになってきています。
実際、積極的に精神障がい者雇用に取り組む企業からは、「社員の多様性が組織の強みになっている」「障がいのある社員の仕事への真摯な姿勢が他の社員の刺激になっている」といった声が聞かれます。
精神障がい者の就労は、本人だけでなく、企業や社会全体にとっても大きな意義があると言えるでしょう。
雇用の現状と課題
しかし、精神障がい者の雇用は、まだ十分に進んでいるとは言えません。厚生労働省の調査によると、2020年の民間企業の障害者雇用状況は以下の通りです。
障害種別 | 雇用者数 | 実雇用率 |
---|---|---|
身体障害 | 333,039人 | 1.84% |
知的障害 | 120,808人 | 0.67% |
精神障害 | 58,201人 | 0.32% |
精神障がい者の実雇用率は0.32%と、他の障害種別と比べて低い水準にとどまっています。法定雇用率2.3%の達成には、なお遠い状況にあると言えます。
こうした現状の背景には、以下のような課題があります。
- 精神障がいに対する理解不足と偏見
- 精神障がい者の特性に合った職務の切り出しの難しさ
- 職場の受け入れ体制の整備不足
- 採用後の支援体制の不備
企業には、これらの課題を一つ一つ克服し、精神障がい者が活躍できる職場環境を整備していくことが求められています。
企業に求められる役割
精神障がい者の雇用を促進するには、企業の主体的な取り組みが不可欠です。単なる法令順守ではなく、障がい者の能力を引き出し、戦力化していくことが重要となります。
そのためには、以下のような姿勢が求められます。
- トップのコミットメントと組織全体の意識改革
- 精神障がいに関する正しい理解の促進
- 職務の再設計と必要な配慮の提供
- 外部の支援機関との連携
企業には、精神障がい者一人ひとりと向き合い、その可能性を信じて支援する姿勢が何より大切だと言えるでしょう。
採用プロセスにおける配慮
求人広告の工夫
精神障がい者の採用を進めるには、まずは求人広告の工夫から始めましょう。障がい者手帳の有無を問わない、オープンな募集姿勢を示すことが大切です。
具体的には、以下のような点に留意します。
- 「精神障がい者の方も歓迎」など、メッセージを明記する
- 職務内容や求めるスキルを具体的に記載する
- 働く上での配慮事項を記載する
- 相談窓口の連絡先を明示する
求人広告を通じて、精神障がい者の方に安心して応募いただける環境を整えることが重要です。
面接時の留意点
面接では、精神障がい者の特性を踏まえた配慮が必要です。一方的に質問を投げかけるのではなく、対話を通じて本人の強みや適性を引き出すことを心がけましょう。
具体的には、以下のような点に気をつけます。
- 落ち着いて話せる環境を整える
- 体調への配慮を示し、リラックスしてもらう
- 仕事への意欲や適性を丁寧に聞き取る
- 就労に向けた不安や配慮事項を確認する
- 採用可否は後日改めて連絡することを伝える
面接は、企業と求職者の相互理解を深める重要な機会。精神障がい者の方の安心感を高められるよう、丁寧な対応を心がけることが大切です。
採用後の配属と職場適応
採用が決まったら、次は配属先の選定と職場適応の支援が重要になります。本人の適性や希望を踏まえ、できるだけ無理のない職務から始められるよう配慮しましょう。
具体的には、以下のような点に留意します。
- 本人の強みを活かせる職務を選定する
- 業務内容や作業手順をわかりやすく説明する
- 定期的なフォローアップ面談を行う
- 必要に応じて業務内容や職場環境を調整する
- 周囲の社員の理解と協力を得る
採用後の丁寧なフォローが、精神障がい者の職場定着を後押しすることにつながるのです。
職場環境の整備と支援体制の構築
理解促進のための社内研修
精神障がい者が安心して働き続けられるには、職場の理解と協力が欠かせません。管理職や同僚に対し、精神障がいに関する正しい知識を持ってもらうための研修を実施することが大切です。
研修では、以下のような内容を盛り込むとよいでしょう。
- 精神障がいの種類と特徴
- 接し方や配慮のポイント
- 職場での合理的配慮の具体例
- 相談窓口や支援体制の紹介
社内研修を通じて、精神障がい者への理解を深め、共生意識を醸成していくことが求められます。
業務調整とストレス管理
精神障がい者の中には、ストレスに脆弱な方も少なくありません。業務の進め方や職場環境に配慮し、ストレスの軽減を図ることが大切です。
具体的には、以下のような取り組みが考えられます。
- 業務量や難易度の調整
- 柔軟な勤務時間の設定
- 休憩スペースの確保
- ストレス対処法の助言
- 定期的なメンタルヘルスチェック
一人ひとりの状況に合わせた業務調整やストレス管理を行うことで、精神障がい者の就労を支えていくことができるのです。
社内相談窓口の設置
精神障がいを持つ社員が抱える悩みや不安に寄り添うには、社内の相談窓口が重要な役割を果たします。人事部門や産業保健スタッフが中心となり、気軽に相談できる体制を整えましょう。
相談窓口では、以下のような対応を行います。
- 悩みや不安の傾聴
- 必要な配慮や支援の検討
- 主治医や支援機関との連携
- 復職支援やキャリア相談
社内の相談窓口が、精神障がい者の就労を支える「心の拠り所」となるよう、体制づくりを進めることが大切です。
外部機関との連携
精神障がい者の就労支援には、企業の取り組みだけでは限界があります。ハローワークや地域の就労支援機関、医療機関などと連携し、専門的なアドバイスを得ることが重要です。
例えば、以下のような連携が考えられます。
- ハローワークの専門援助部門の活用
- 障害者就業・生活支援センターとの協働
- 就労移行支援事業所との情報交換
- 主治医との連絡調整
外部の支援リソースを上手に活用しながら、精神障がい者の就労を支えていくことが求められます。
まとめ
精神障がい者の雇用支援は、企業にとって重要な社会的責任であり、多様な人材を活かす上でも欠かせない取り組みです。採用から職場定着まで、一人ひとりに寄り添った丁寧な支援を行うことが何より大切だと言えるでしょう。
まずは、精神障がいに関する正しい理解を深め、偏見のない採用活動を心がけること。そして、職場の環境整備や支援体制の構築に取り組み、安心して働ける職場づくりを進めること。こうした地道な取り組みの積み重ねが、精神障がい者の活躍を後押しすることにつながります。
企業の皆様には、ぜひ精神障がい者雇用に前向きに取り組んでいただきたいと思います。貴社の持続的な成長と、共生社会の実現のために、一緒に歩んでいきましょう。
本日は、私の支援活動で得た知見をお話しさせていただきました。皆様の実践の一助となりましたら幸いです。ご清聴ありがとうございました。
最終更新日 2025年1月29日 by hitozu